発達障害とワーキングメモリについて

目次

ワーキングメモリとは

発達障害を抱えていると、普通の人が当たり前に出来ることができない事に悩む機会が多いです。その一つにワーキングメモリの不足が影響していると言われています。ワーキングメモリとは簡単に言うと、「短期記憶」+「情報処理能力」です。ワーキングメモリとは単に短い時間で何かを覚える能力ではなく、短い時間の中で頭の中で情報を保持し、同時に別の作業をする能力を言います。

例えば、電話対応する際に耳で相手の会話の内容を聞き、頭の中で短期的に情報を記憶しながら、同時に会話の内容をメモをしたりする時にワーキングメモリの強弱により対処できるか変わってきます。発達障害を抱えていて電話対応が苦手な人が多いのもこのワーキングメモリの不足が要因となっています。単にワーキングメモリの不足だけでなく、ガヤガヤした状況では電話の音声以外に余計な情報が耳に入ってくるため、情報の取捨選択が上手くできず、焦り余計に混乱してしまいます。声を音と認識してしまう聴覚処理障害も影響することで、普通の人が当たり前に出来ることができません。

ワーキングメモリを強化する方法はあるのか

ワーキングメモリの役割が分かり、努力して改善できるか疑問に思う方は多いでしょう。私自身もワーキングメモリの不足により、仕事だけでなく日常生活にも支障をきたしていたので、努力して改善できるなら一刻も早く改善したいと色々と書籍やネットの情報などを参考にワーキングメモリ改善のトレーニングは何かないかを探し試しました。おそらく一番有名な改善トレーニングとしてよく挙げられるのが「Nバック課題」ではないでしょうか。

Nバック課題とは

Nバック課題とは短い時間の中で頭の中で情報を保持し、同時に別の作業をするゲームみたいなものと捉えて問題ないでしょう。まさにワーキングメモリの特性を使ったゲームです。具体的に何をやるか。

口頭で数字がランダムに、「5→8→4→2→1→7→6→3」と言われたとします。この流れのなかで、1つ前の数字を覚えて回答するのが「1バック」です。

例えば「8」の1バックは?「5」、「4」の1バックは?「8」、「6」の1バックは?「7」になります。同様に「4」の2バックは?「5」、「2」の2バックは?「5」、「1」の2バックは?「4」になります。このように、バック数(N)の数字が大きくなるほど、回答の難易度は上がります。

このゲームの大事な所は、(i)で一定のランダム数字を記憶し、同時に(ii)Nバック数を回答しなければならないことです。当たり前ですが、紙に書かれたランダムの数字を見ながらNバック数を回答するのは簡単です。実際にやると分かるのですが、耳で聞いたランダムの数字を頭の中に一時的に記憶し、再度アウトプットする作業はかなり大変です。(i)、(ii)のタスクを同時にこなす事は、まさにワーキングメモリが必要とするスキルに違いないように思われます。

Nバック課題の効果は

Nバック課題のルール、ワーキングメモリが必要な事はなんとなくわかりました。確かに短い時間の中で頭の中で情報を保持し、同時に別の作業をする能力を試すゲームなので、一見すると効果があるのではないかと思われる方も多いと思います。実際に過去の私はアプリでNバック課題を3か月間毎日こなしトレーニングし、11バックまで答えられるまでになりました。

結果仕事ができるようになったかと言われれば、答えは「No」です。Nバック課題がいくら上達しても上司から口頭で説明を受けながらメモを取る作業は依然として苦手、電話対応も上達はしませんでした。Nバック課題の効果は個人差があるのかもしれませんが、私はNバック課題を通してワーキングメモリの向上→苦手な業務改善には繋がりませんでした。

確かにNバック課題は集中力をかなり要するので脳に負荷がかかり鍛えられている実感はありました。実際に11バックまで答えられるほどNバック課題は得意になりました。しかし、私が求めていたのはNバック課題ができるようになるのではなく、仕事で必要なワーキングメモリの向上でした。人によってはNバック課題を通して実際に仕事ができるようになった方もいるかもしれませんが、統計的に根拠のある数字もないので、実際の効果は正直のところ分かりません。

Nバック課題は無駄だったか?

3か月毎日必死にトレーニングしたNバック課題が無駄だったのかといわれると、無駄だとは思いませんでした。Nバック課題はかなり集中力が必要なので、朝寝起きに課題に取り組むことで思考がクリアになり1日にのスタートが切りやすかったです。また、私の場合は仕事へ活かすことができなかったとういう事実も残ったので、試さず悩むよりは試してダメだったので諦めがつきました。

ワーキングメモリの向上よりも工夫

ワーキングメモリ向上の為の訓練はNバック課題以外にも他にあるかもしれません。しかし、今の私はワーキングメモリを向上させるのではなく、いかにワーキングメモリの不足を補うかの方にシフト変更しています。ワーキングメモリは元々脳の機能的な問題なので努力でどうこうできる問題ではないのかもしれません。向上するかしないかの問題に取り組むのではなく、苦手な業務をピックアップし、そのタスクをどうやってこなすかを考えた方が有益だと思っています。

(課題):電話対応で相手の話を聞き取れない→(対策):電話内容を周りに聞こえるよう復唱する

電話対応する際に耳で相手の会話の内容を聞き、頭の中で短期的に情報を記憶しながら、同時に会話の内容をメモをができないのであれば、自分1人の力でなんとかしようとせずに、ツールに頼ったり、周りの人の力を借りることを優先しましょう。電話相手の内容を大きな声で復唱し、周りに電話の内容を聞き取ってもらいます。そうすることで、自分では理解できなかったとしても、電話の内容を周りに発信し聞いてもらうことで、どんな話をしていたのか情報共有ができます。

上司の説明を理解できないなら、事前にその旨を相談してボイスレコーダーで録音し、後で聞きながら復習しましょう。

まとめ

発達障害とワーキングメモリの関係性についてお話しました。ワーキングメモリの能力を向上しようと努力するのではなく、ワーキングメモリの不足により弊害が起きていることを洗い出し、その解決方法を探す事に力を注ぐことが重要です。勿論Nバック課題が全く効果がないとは言い切れません、この記事を通して興味を持たれた方は一度実践してみてもよいかもしれません。

自分一人の力で頑張ろうとせず、周りのサポートやメモアプリなど便利なツールも増えてきているので、人や物に頼りワーキングメモリ不足による弊害を一つずつ解決できるよう努力していきましょう。

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